【第3回】「問題」を聞き出した後の、整理の仕方

【第2回】企画書のあるべき姿とは?では、企画をまとめるにあたって、まずしっかりと現状把握する必要があり、そのためには現状の「問題」を経営層・現場層にインタビューするのが良い……という内容を書きました。
ここでは、その「問題」を聞き出した後の、整理の仕方について書きたいと思います。
目次
インタビューした問題の整理・分類
さて、ある程度の人数に対してインタビューをしたならば、聞き出した問題は、かなりの数になるかと思います。
これらをすべて企画書に羅列するのではなく、整理・分類していくことになります。
その方法としては、KJ法のように同種の問題を並べてグルーピング(分類)することが、一般的には多く行われています。
しかし実際にやってると…
- うちの会社は営業力がない
- うちの営業は新規開拓ができない
- うちの営業は既存客へのフォローがおざなりだ
- 新規開拓するにも、開拓すべき顧客リストがない
- うちの営業はお客様の懐に飛び込むのが下手だ
- 事務処理に追われて、新規開拓に割く時間がない
- 属人的な営業スタイルで、組織で戦えていない
- マネージャがプレイヤーなので、部下を指導できていない
- 営業のスキルが低く、御用聞きしかできていない
- 営業を教育していく制度がない(商品知識が足りない)
上記のような話がバラバラと出てきたとします。
これらをグルーピングすると…「うちの会社は営業力がない」に全部集約されてしまいそうです。
粒度を落として「新規開拓」でまとめると、2番・4番は良いとしても、5~9番はどうしましょう?
これらは「既存客へのフォローがおざなり」にも分類されそうです。
それでは、さらに粒度を細かくしてグルーピングすると、どうでしょうか?
5番・9番は、営業スキルの低さを指摘していますから、良く似た問題のように思います。
7番・8番は、組織のことを言っていますので、これもグループ化できそうです。
いかがでしょうか?
「粒度」の話は、できるだけ細かいレベルから見ていき、まとめていくのが良さそうですね、
問題の「本当の意味」を考える
では、残る1番・2番・3番・4番・6番・10番についてです。
これらを整理する際には、問題の「本当の意味」をよく考える必要があります。
1~3番では「今こういう状態だ」=「起きている現象」を指摘しています。
4番も、現象について話していそうですが…発言の意図を考えると「道具がそろっていない」=「手段」のことを指摘しているようです。
そう考えると6番はどうでしょうか?これは「原因」について話していそうです。
次に、先ほど同種として分類した5番・9番はどうでしょうか?
スキルがなくて営業が上手くいかないことの指摘ですから、これも「原因」です。
7番・8番は、組織的な営業ができていない話なので、これも「原因」。
そして10番は「手段」としましょう。
問題の多くは入れ子状態
さて、「組織的な営業ができていない」は、たしかに新規開拓や、既存フォローが上手くいかない「原因」と言えるけれど、「現象」とも言えるではないか?
……確かにそうです。
ここに、問題分析の難しさがあります。
問題の多くは入れ子状態になっているのです。
有名なトヨタのなぜなぜ分析は、原因を徹底的に掘り下げることで、改善事項を見つけていきます。
ここでは「組織的な営業ができないのは、なぜか?」ですね。
整理すると、下図のようになります。
「意味」の捉え方についての補足
ここで、「問題の意味」について飛ばした部分を解説します。
意識の問題にせず、事実を事実として捉える
たとえば、6番「事務処理に追われて新規開拓に割く時間がない」は、人によっては単純に「言い訳」ではないか?と捉える人もいるかと思います。
具体的には
「新規開拓が得意なA君は、他の営業マンより事務処理数は多いにも関わらず、新規開拓に多くの時間を使い、成果もあげているではないか?したがってこれは会社としての問題ではなく、単なる言い訳に過ぎない」
という意見もきっと出てくるでしょう。
しかし、事務処理が多く、営業活動の妨げだと、多くの営業マンが感じているのであれば、その事をファクトとして捉えることのほうが重要です。
「事務処理に追われて新規開拓に割く時間がない」を、「事務処理に掛かる時間が多い」と言い換えているように、問題を表現するときは修飾をなるべく省いた簡素な文章にすることが大切です。
手段の問題であればそれ以上の深掘りはしない
「手段」としたところを、上の階層からみて「原因」とも表現できるのではないか?
確かにそうなのですが、ある程度、明示的な手段の問題であれば、そこで解釈を止めないと問題が逆に広がっていき、解決策が見えなくなってしまいます。
一番分かりやすい例としては、
- 「営業を教育していく制度がない(商品知識が足りない)」
→「営業への教育がない(手段)」
のくだりです。
この問題に対して、際限なく「なぜ」を繰り返すと、どうなるでしょうか?
「そもそも経営陣が営業に対して投資していく意思が少ない」
「なぜ?」
「経営陣は営業現場に対しての理解がない」
「なぜ?」
と、留まることができません。
企画においては「手段」の話が出てきたら、いったんそこで止めることを意識すべきです。
そう考えると逆に、今回の例では「手段」の話が未だ2つしか出ていませんので、明らかに問題の深掘りが不足していることも理解いただけると思います。
「営業スキルが低い」という問題も、本当に教育だけの話なのか? を考えれば、それ以外にもあるよ、となる可能性が高いのではないでしょうか?
「組織的な営業ができていない」「事務処理にかかる時間が多い」は、もう一段「なぜ」を行って、手に落ちる解決手段を見つけたほうが良いでしょう。
まとめ
問題分析は、自分の整理のために行う
最後に、上記のような画像をそのまま企画書に載せることは、おすすめできません。
今回はあくまで、インタビュー後の問題整理を(頭の中で)どのように進めるべきか? の参考として書きました。
但し、企画書をまとめるために現状の問題分析はとても重要です。
頭の中で整理ができてしまえば。
あとは表現方法が主題となっていきます。
問題を整理できれば、企画すべき内容はおのずと見えてくる。
但しその作業は決して簡単な作業ではない。この点においては習うより慣れる方が近道だろう